

荘厳なARAVIS山脈。ローランさんがそこで研修を実施しているのは、「山や自然の美しさを子供に伝えるのは大事だ」と思ったからだそうです。
創立者と指導者であるLaurent Fortuneローラン・フォルテューンさん。とても温かい、思いやりのある人で、子供に大変人気のあるリーダーであることが、よく理解できます。
研修が始まる日に、ローランさん(左)が他の先生と打ち合わせしているところ。皆がスポーツの場面のみではなく、子供の一般教育のプロでもあります。 |
前回は息子の夏休みについてご紹介し、彼が今私たちと離れて、サマーキャンプでテニスの研修を受けていることを説明しました。今回はこのARAVIS CLUB (公式サイト:www.aravis-tennis.fr)についてもう少し詳しくお話しようと思います。フランスアルプスのGrand Bornandグラン・ボルナンの村にあるクラブは大変面白く、参加する子供たちに貴重な経験を色々と与えています。第48回目のカルネ・ド・フランスでは、今年のワールドカップにおけるフランスのサッカーチームの「失敗と退廃」について書きましたが、ARAVIS CLUBのようなところでは、子供にスポーツとスポーツマンシップの本当の意味を教えているので、対照的です。実は、フランスのテニスの一番立派な、高品質な考え方を表現していると思います。
ARAVIS CLUBは1997年にフランスのテニス選手、Laurent Fortune(ローラン・フォルテューン)氏によって設立されました。長年トーナメントで素晴らしい実績を残し輝いていた元プロテニスプレーヤーのローランさんは、現在南フランスでテニス講師として活躍し、テニスをより集中的に教えるために、サマーキャンプのコンセプトを展開してきました。子供に自然の大切さを教えることも大事だと思い、そのために山の観光地であるオートサヴォアの村を選んだのです。キャンプを始めた時には5〜6人の子供に限られていましたが、その評判が段々広がるにつれ、参加メンバーも増えて、現在では、毎年夏に120人の子供(10〜18歳)を迎えることになりました。本格的なクラブのコンセプトも展開してきました。
ARAVIS CLUBの成功のカギは、どこにあるのでしょうか? 子供が、毎日3〜4時間のテニストレーニングを受けて、トーナメントに参加できます(それによってランキングを改善できる可能性があります)。テニス以外も色々なスポーツと文化的活動に参加できます(水泳、ハイキング、ダンス、カーレース、映画など)。指導者のコーランさんを含む10人あまりのチームは皆プロのコーチと教育者で、24時間子供の面倒を見ています。クラブメンバーが皆同じところで宿泊し、ARAVIS CLUBが貸り切ったファミリースタイルのホテル(サヴォア・ホテル)に泊まっています。高品質な指導と施設の充実ぶりを見ると、あまり高くない研修だと思います。普通の家庭でも充分手が届く値段です。
ARAVIS CLUBのスポーツに対する考えは素晴らしいと思います。ローランさんに説明してもらったところ、彼は子供にはテニスの技術のみではなく、「上手な負け方、上手な勝ち方、そして相手を尊敬しながら、優劣を競うスキル」を教えることに努めているのです。スポーツを通じて、自分を磨いて、責任感、粘り強さ、勇気と闘争心を育てるのが目的で、「テニスでは、まず自分が試されるのだ」とローランさんが言います。もう一つは、「子供をテニス『パフォーマンスの機械』に変えることが決して目的ではなく、それぞれのパーソナリティを大事にし、それぞれの可能性を生かすことを目指しています」と説明してくれました。ローランさんにとっては、一番優秀なテニスの選手は、体のみではなく、頭とモラルも丈夫で、良心的なのだそうです。そのスポーツのモラルと理想をARAVIS CLUBを通じて、子供に幅広く伝えたい情熱がローランさんの言葉ではうかがえると思います。
ARAVIS CLUBでは、テニス以外、様々な活動を行っている理由について「人生は、スポーツと競争のみではありません。遊び、音楽、映画、お互いに楽しく付き合うこと、それも子供の成長のために大事なのです」と、ローランさんが言います。テニスがシングル(一人で戦う)スポーツであること、子供に「一緒にやる」意味を教えるべきだ、と強調しました。皆同じ施設に滞在させることによって、子供に共同生活のルールも教えることができます。「一緒に過ごしている間、お互いをちゃんと尊敬し、丁寧にコミュニケーションを取るのも、本当のスポーツマンになるために必要なのです」というローランさんの言葉は印象に残りました。

私はARAVIS CLUBを訪れた時に一番感じたのは、その温かい、まるで大きなファミリーのような雰囲気でした。ローランさんの、お父さんのような、親切な人柄にもよると思いますが、子供たちが自分の家族と離れていても「ARAVISファミリー」のメンバーとして大事にされて、可愛がられていることも、そのキャンプの一つの特徴だと思います。その証拠かもしれませんが、研修が終わると、クラブの仲間たちとの別れの日がやってくる時に、多くの子供が泣いてしまうそうです。2〜3週間の比較的短い滞在の間、これほどクラブを好きになるのです。FACEBOOKでクラブ専用のネットワークができてから、それを通じて年中、お互いにコンタクトを取る子供が増えたそうです。毎年キャンプに戻ってくる子供も非常に多いです。
試合の支度をしている息子。その時のトーナメントは負けましたが、「先生のお陰で、どこが上手くいかなかったのか、よくわかったから、よかった」と息子が言っていたのが印象に残りました。 |
息子テオも、3週間の間、すっかりとクラブの生活と雰囲気にとけ込んでしまい、夢中になっています。電話でお話しする時間さえもほとんどなく、「毎日すごく楽しく、友達もたくさんできたよ」と喜んでいます。テニスは自分より優秀な子供が多く、「最初はちょっと落ち込んじゃったが、自分のどこが弱く、どこがスキルアップできるのかがわかったから、頑張るよ」という、かしこそうな言葉に驚きました。自分を客観的に見る力が芽生えたような感じがしました。それと、クラブの温かい雰囲気の中、息子が色々なことを知り、色々な人と付き合い、視野がより広くなり、テニスマンとしてのみではなく、「人間」としても成長できると思います。親としてこれほどありがたいことはないでしょう。息子は自立への第一歩を踏み出したことを実感しました。もう間もなく、息子の研修が終わります。その時に、彼も泣いてしまうかもしれません。人生は、様々な出会いと別れの繰り返しであることを、初めて味わう時期もやってきたかもしれません。
ARAVIS CLUBは現在フランスの子供のみが参加していますが、ローランさんには今後、外国の子供たちにも提供したいという予定があります。確かに、そのコンセプトは、普遍的なアピールを持ち、様々な国の子供を魅力させる力を充分持っていると思います。世界中の子供を迎えることができれば、その文化の交流から、「人間の教育」としての価値がさらに上がるでしょう。
リーン・ロゼ創立150周年記念