カルネ・ド・フランス

ワールドカップーフランス対日本

フランスがメキシコに負けた時の写真。「ルモンド」新聞の表題が象徴的だ。「撃破されて、屈辱されて、こき下ろされていたフランスチーム」ひざをついていて、頭を下げている選手も象徴的......。(LE MONDE 6月19日版より)

私は正直に言えば、サッカーのファンではありませんが、今年のワールドカップは非常に興味を持ち、家族と友達と一緒にほとんど毎日TVで試合を見ていました。私たちが一番関心を持ったのは、もちろん自国フランスのサッカーチームでした。その失敗について、日本でもご存知だと思いますが、フランス人としてどう受け止めたのか、について書いてみたいと思いました。

いったい何が起こったのでしょうか。まず、フランスはウルグアイに対して0−0、メキシコには0−2の悲惨なスコアで負けて、最後南アフリカに1−2で負けてから、ワールドカップから外されました。1998年にワールドカップで勝利し、前回大会では準優勝になった同じ国のチームであることが信じられないほど、悪い成績でした。しかし、それのみならず、チームの中に様々な問題(仲間喧嘩、ジェラシーなど)が発生し、アネルカ選手がメキシコ戦でドメネク監督に酷い暴言を吐いたことが明らかになりました。アネルカはフランスのチームから除外されてしまいましたが、他のチームメンバーがそれに抗議し、翌日の練習を拒否。その「ストライキ」が世界中のメディアに報道されました。評判のよかったフランスチームは、国内と海外にもあざけりと非難の的になってしまいました。試合結果が悪かったことは、まだ許されたかもしれませんが、チームメンバーの「利己的な行動とチームワークの欠如」がフランス人にとって一番ショックでした。「チームとして機能していなかった」、「わがままな選手はフランスの恥だ」という声が挙げられ、選手は法外な給料にも関わらず、練習を断っていることは世のひんしゅくを買いました。フランスサッカーの最高責任者であるサッカー連盟のトップ、エスカレット氏が辞任しましたが、世論はまだまだ収まっていない状態が続いています。今フランスでは、「国家の災害」(desastre national)という表現が使われているほどです。

1938年のワールドカップのフランスティーム。6月5日のコンロンブスタジオでベルギーに勝ったときに画像。次の試合はイタリアに負けまたが......。当時の選手もアイドル的な存在だったそうです。(スポーツ雑誌L'EQUIPE No.1455 2010年6月号より)

他方、日本のサッカーチームもフランスで注目を受けました。デンマークチームに勝った時には、日本の選手は「チームワークが優れている」、そして「闘争心をむきだしている素晴らしいチームだ」、とフランスのコメンテーターが褒めていました。私の友達と仕事仲間も、「日本チームが立派で、我々のチームは、それに比べると、恥ずかしくなる」と言っていた人が多かったです。日本は結局パラグアイに負けても、「最後まで頑張った」というイメージが残りました。岡田監督が負けたことについての全面的な責任を取って、自分のチームを褒めていたことも、LE MONDE新聞に「紳士的な負け方」として報道されました。ワールドカップから外されてからもお互いを責めて、仲間喧嘩を続けている、無責任なフランスチームの振る舞いが対照的です。

フランスでは、サッカーは、年齢も社会階級を問わず一番人気のあるスポーツで、国の歴史、社会、政治とも関連しています。サッカーチームの勝利/敗北は国の国際的な地位を象徴するように思われるほどです。例えば、1938年(つまり第二次大戦の始めに)のワールドカップの際、フランスがベルギーに勝ってから準々決勝でワールドカップの勝利者になったイタリアに負けた時に、「枢軸国(日本、ドイツ、イタリアの3国)の進出と連合国の後退の印としても解釈されたようです。1998年にフランスがワールドカップで勝利した時には、国全体の「強み」を代表しているように讃えられました。サッカー選手はフランスでは代表的、いや、英雄的な存在であり、その場面で、スポーツの実績のみではなく、特に子供にとっては一般的な行動とモラルに関しても大変期待されています。それを、今年のフランスチームはまったく忘れてしまったようなのです。最近、日本の相撲界でも刑事事件が発生し、相撲のイメージも非常に悪くなったと聞いていますが、フランスチームの「退廃」と似たところがあるかもしれません。

子供もサッカーが大好きで、庭で遊んでいる息子と近所の子供たち。息子はテニスが好きなのですが、友達に中には、「サッカー選手」になりたい子が何人かいます。彼らにとっても、フランスチームの今年の失敗が大ショック。

日本のサッカーチームが帰国する時に、大勢のファンの出迎えを受けたことを聞きました。それに対して、フランスチームは、空港で20人ぐらいしか出迎えに行かなかったようです。それは、「歓迎」と「御祝い」の気持ちではなくて、チームに直接不満を言い、批判をぶつけるために、空港に来た「ファン」がほとんどだったようです。やはりどんな国でも、ファンは、自分がサポートしているチームが、全力を尽くして、真剣に頑張ってくれたかどうかを、見抜く力を持っていると思います。負けても、全力を出し切って戦ってくれるチームは誰でも尊敬するでしょう。その意味では、今年は、ワールドカップでは日本はフランスに勝ったと私は思います。

ページトップ

リーン・ロゼ日本発売30周年記念