カルネ・ド・フランス

息子の夏−その1......別れ

グラン・ボルナン村の広場と教会。どんなに小さな村であっても、必ず教会があります。元々の山の生活が厳しかったためかもしれませんが、カソリックが非常に根強い地方です。背景に有名なアラヴィス山脈が見えます。

7月の始めから、フランスの学校は2か月間の夏休みに入り、子供は9月の始めまで、バカンスになります。フランスは、ヨーロッパの中で夏休みがもっとも長い国で、これはGRANDES VACANCES(グランドバカンス・大きなバカンス)と呼ばれています。大人の場合は、学校と大学の先生以外、2か月も休める人はほとんどいませんが、少なくとも3〜4週間の休みを取るのが普通です。そこで、二つのグループに分かれます。7月にバカンスを取る人が、JUILLETISTES(ジュイエッチスト・7月組)、そして8月になる人はAOUTISTES(ウティスト・8月組)という面白い呼び方をします。

7月と8月の始めは、それぞれの「組」がバカンスに出かける時期なので、大変混み合ってしまい、高速道路は何百キロもの渋滞になる場合が多いです。不景気のため、バカンスで贅沢できない人が増えましたが、いくら予算が少なくても、キャンピングやハイキングなどはあまりお金がかかりません。ですので、どこかの国内のキャンピング場、観光地へ出かける人が多いです。

去年、息子が一番憧れているテニス選手、ROGER FEDERERのサインのあるテニスキャップをプレゼントにもらい、その時の喜びの表情。

3年前にテニスを始めた時の息子。当時は9歳でした。脚は短く、テニスコートを一回りするのもまだ大変。

子供を抱えているフランス人家庭には、一つの問題が必ず起こるのです。それは、2か月間も学校に通っていない子供は、親がバカンスを取っていない間、どのように時間を過ごせばよいのか、ということです。親が仕事に出かけている間、子供を一人で家にほっとく訳にはいけませんから......⋅。そのために、子供を、市町村が組織するCOLONIE DE VACANCES(コロニーヂュバカンス・林間学校、臨海学校)に預ける人も多いです。スポーツ組合とクラブが組織するサマースポーツ・キャンプもよくあります。そのために、経済的に恵まれていない家庭に政府が援助金を払う場合もあります。

コロニーとスポーツキャンプは、多くのフランス人家族にとって、「子供と別れてしまう」意味も持っています。子供を独立させる、一人前の大人になるための教育の一つとして見られていることが面白いと思います。個人主義を大事にしているフランスは、日本と比べると、子供を早く自立させる習慣があり、「自分が考えて、自分の力で生きる人間に育つ」という独立精神を、学校と家族の教育の中で子供に伝えて行くのは普通なのです。

8月で13歳になる我が家の息子、テオも今年同じことになり、バカンスの一部を私たちと離れて過ごすようになりました。彼はテニスが好きで、テニスのサマーキャンプへ行くことになったのです。彼がテニスを始めたのは、3年前ですが、とても夢中で、「将来はプロのテニス選手になりたい」と言うほど熱心に、毎週2〜3回、隣の町のテニスクラブで練習しています。

テオが一番憧れているテニス選手はスイスのロジャー・フェデラーですが、フランスのウィルフリード・トンガも大好きです。去年からトーナメントが多く、テオはランキングも徐々に上がり、現在「30」のランクを占めています(フランスのテニスランキング制度は複雑です。No.40から始まり、その次は30/5、30/4、30/3、30/2、30/1、30。それから15/5、15/4、15/3、15/2、15/1、5/6、4/6、3/6、2/6。その次は「0」、そしてマイナスのランクになります。−2/6、−4/6。最後の−15、−30はプロのレベルになる)。テオは、現在「30」のランクから「15/5」まで前進したいのですが、これはなかなか難しく、最近は失敗を繰り返しています。

夏の間、普段練習しているクラブが閉まっていることもあり、サマーキャンプで集中的にトレーニングを受けたい、というので、ネットで調べたら、偶然ARAVIS CLUBを見つけたのです。フランスアルプスのオートサヴォアの観光地、GRAND BORNAND村にあり、息子はそこで、3週間の研修を受けることになりました。

  • 宿泊するサヴォ・アホテルの駐車場に到着。ホテルに向かう息子と夫。
  • キャンプの指導者であるLAURENT FORTUNEローラン・フォルテューンさんに子供を預けた時、「よろしくお願いします」と挨拶しました。親の代わりに、子どもの面倒をよく見てくれますように......⋅。
  • 部屋で身を寄せて、荷物を片付けているテオ。部屋に、あと二人の仲間が入る予定で、その中での3週間の暮らし......。シンプルな部屋ですが、景色がきれいで、落ち着いたところです。

息子の部屋からの景色。子供が歩いて村の中心まで行ける距離で、便利のよい場所です。

7月の始めに、キャンプが行われる場所まで連れて行きました。息子を、研修の指導者Laurent Fortune(ローラン・フォルテューン)さんに紹介してから、宿泊するホテルの部屋まで案内しました。その時に、とても複雑な思いをしました。テオが嬉しそうで、「部屋も素敵で、先生も優しそう」と喜んでいましたが、親としては、「本当に大丈夫だろうか? ホテル、食事、スポーツ練習も上手くいき、他の子供たちとも仲よくできるのだろうか?」と、頭を悩ませました。何よりも、「私たちがいなくても、ちゃんと元気でいられるのか?」ということが心配でした。

実は、私は出張が多くて子供と別れることが多いのですが、息子が家を出て、長い期間私たちと別れて過ごすことは初めてで、少し寂しい思いをしました。子供とホテルの前の駐車場で別れた時に、不意に涙が溢れてしまいました。その時に息子に「ママ、大丈夫だよ、僕は元気でいるよ」と慰めてもらいましたが、母親の人生の中では、大きな節目の日であるような感じがしました。「息子が独立し始めて、私たちの世界から一歩出て、自分の世界を創り始めたのだ」と痛感したのです。

息子と別れた時の、その瞬間。私も悲しかったけれど、息子も少し寂しそうに見えませんか?

息子が家からいなくなって、もう3週間目になりました。電話で話をすると、とても元気にしていることがわかり、安心しているところです。息子が素晴らしい体験していることは、主にARAVIS CLUBのコンセプトと指導者の質によると思います。それについて、また次回ご紹介したいと思います。

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