カルネ・ド・フランス

フランスにおけるカップル生活、その2

フランスの離婚率は30%以上ですが、パリは50%を超えています。美しい町ですが、不幸なカップルが多いですね。都市生活のストレス、経済的な困難、そして「新しい相手になれる人がたくさんいる」ことが理由としてあげられています。

フランスのカップル習慣のリポートの続きです。フランスは日本に比べて、離婚率の高い国です。夫婦の3組に1組以上が離婚します。パリではその率は、2組に1組になります。その4分の1は再婚します。しかし、離婚に伴う困難や負担は日仏間で大きく違います。フランスの女性は働く人が多く、保育設置も整っており、離婚しても子供が犠牲にならない背景があります。つまり、愛し合っていない二人が一緒に暮らし続けるより、離婚するほうがましだ、という考えがフランスの場合、常識になっています。

最近の日本は、少し変化したかもしれませんが、それでも「家族のために」不幸な結婚生活を送っている人がまだまだ多いと思います。日本では、結婚は「家と家のつながり」として考えられていて、フランスの場合は、「個人と個人のつながり」としてとらえられ、離婚に対する壁も薄くなっています。たとえば、日本の戸籍制度のようのなものもフランスにはありません(個人登録になっています)。

再婚は子供の不幸を招くものだとみられてきましたが、現代では、親の再婚を白い目でみる人はほとんどいません。そのために、離婚や再婚の結果生まれた「複合家族」も、とても多いです。複合家族と片親家族の両方を合わせると、フランス家族全体の約2割を占めることになります。私の友達の中でもこういった「複合家族」が多く、1つのファミリーを第22回目のカルネで紹介しています。

離婚率が高いから、家族、子供を大事にしていないわけではありません。逆に、フランスは「家族」は非常によいイメージがあり、「家族、子供が幸福な国」といわれています。フランス人は、仕事と家族の間のバランスを保ち、週末にはかならず子供や家族と過ごす習慣があります。フランスで1か月間もかかる夏休みも、皆家族で出かけて、家族で過ごすことにしています。

そういう形で、寿命が長くなったこともあり、フランスは複数の共同生活や別離、結婚と離婚、ユニオン・リーブルやパックス、子供も違うパートナーとつくり......など、ひとりの人間がさまざまな生活形態を経験することは、少しも珍しいことではなくなっています。ある社会科学者は、これは「ザッピングの社会」を表現しているといいます。仕事、住居、パートナーを自由にチェンジすることができる社会になっています。

たとえば、現在のフランス大統領、ホランド氏がそうです。前の奥さんと離婚し、新しいパートナー、バレリー・ツリーワイラーさんと、結婚せずに共同生活しています。ホランダ氏もツリーワイラーさんも、前の結婚から3人の子供を持ち、合計で6人の子供を抱える「複合家族」になっています。これはフランスでは非難されていません。ただ、外国で大統領としての儀式、会議に参加する場合、国によって非婚のカップルが認められていなく、どうしても正式な夫婦でなければならないことが問題になっているようです。日本のエリート社会も、非婚のカップルは、ほとんどいないと思います。

面白いことに、パートナーを簡単に「変える」フランス人ですが、独身の生活が嫌われ、あくまでもカップルをつくりたい民族です。フランスは強力なカップル社会で、ひとりで生活することには、寂しい、暗いイメージがあります。ソーシャル・ライフも完全にカップル向けで、パーティーや食事に招待されたとなれば、かならずパートナーと同伴するのが普通です。レジャー、旅行もそうで、ひとりで出かける人がほとんどいません(イギリス人はひとりで旅立つのが多いと聞いています)。つまり、仕事の枠外の時間はカップルで過ごすべきだ、という発想がフランスにあります。日本とはずいぶん違うと思いませんか?

  • 日本と違って、旅行とレジャーも、カップルでおこなう習慣があります。グルメレストランの店内も、ほとんどカップルばかりです。日本のように、ひとりで外食したり、同性の友達と食事する習慣があまりありません。「ふたりで食事する」は憧れられていて、カップルライフの1つの楽しみとして考えられています。
  • ホランダ大統領は、離婚してから新しいパートナーと共同生活を送っています。6人の子供も抱える「複合家族」の長、そして「国の長」でもありますから、たいへん忙しいと思いませんか...。
  • フランスでは、遊びも、かならず家族で楽しむ習慣があり、その中でも「家族と過ごす夏休み」は、なくてはならない生活習慣です。あまりお金がなくても、ピクニックをしたり、散歩やスポーツをしたりと、様々な形で家族と遊ぶことにしています。(これは、私達のブルゴーニュの家の庭で、友達の家族とピクニックをしている写真です)。

日本では、仕事の仲間たちとの関係、または同性の友達との関係がカップルよりも大事にされる場合が多いような感じがします。現在フランス人と付き合っている若い日本人女性のお友達がいます。彼女にとっては、「外食も遊びもすべて彼氏とやらなかればならないので、つまらない」といって、「日本のように、もっと女性の友達と遊びたい」と、悩んでいます......。

フランス人が、カップルを通じて、存在感と安心感を得ることができるかもしれません。いくら個人主義で、個人の自由と自立を訴えても、非常にロマンチックな民族であり、幸福を「恋愛」で求めている人が多いです。「永遠の愛」の理想が何回も裏切られても信じ続けるのです。そのため、50代、60代、70代になっても、新しいカップルをつくる人がたくさんいます。こういう形で、フランスでは日本に比べて、様々な生活スタイルのパターンから選ぶことができます。 それでは、フランス人のほうが幸せなのでしょうか......。 選択肢が多すぎて、迷い人も多いのではないか、と思います。

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