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前回に続き、コロナ禍によって変化したライフスタイル、「スローライフ」についてお話します。
面白いことに、特に自家製パンのブームが今起きており、毎日自分でパンを作っている人々がいます。それはなぜでしょうか。パンを自分で焼くと、家中にいい香りが漂い、「マイホーム」の雰囲気が大変よくなるからだと思います。また、文明開化の頃から人々はパンを焼いていました。私も、久しぶりにパンを作ってみました。材料はセットとして購入し、水を加えるだけで少しごまかしましたが、結局美味しいパンができました。
その料理ブームが人々の人生とライフスタイルに様々な影響を与えています。新聞で読んだのですが、ニューヨークでは過去数年の間に、キッチンがついていないアパートや家が多く建設されることになり、食事は外で買ってきて、家族はテレビの前で食べる習慣になっていたそうです。コロナのおかげで、それはよくないことに気がつき、再びキッチンを備える傾向になっています。私には、「キッチンのない家」は想像できません。それがなければ、「心のない家」になってしまうと言っても過言でないでしょう。
スイスでは、今まで料理しなかった人でも(例えば男性)、グルメレシピに挑戦する人々が増えており、毎日大変豪華な料理を楽しんでいる家庭がいるようです。例えば私の友達が、「私たちは、今までにないような、文字通り王様のような食事をしていますよ」と言っていました。そして、二人のティーンエイジャーを抱えている友人の家族では、料理を各メンバーが順番通りに作り、順番通りに後片付けをしています。「ロックダウンのおかげで、家族のコミュニケーションが良くなり、家族のきずなが深まりました」、と喜んでいました。
私たち3人家族も、ディナータイムはいつも一緒に食べているのですが、息子が最近料理に興味を持ち始め、毎週おいしい料理を作ってくれています。その都度、何か新しいレシピをトライし、失敗もありますが、息子が愛を込めて作ってくれた料理を楽しむのは私たち親にとっては、最高の喜びだと思います。
そして、レストランには行けないので、食事をする際に、料理の見た目も美しくし、キャンドルやお花できれいにデコレートされたテーブルで出す傾向も強まっています。みなさんは豪華なテーブルクロスやお皿にも敏感になってきました。日本は昔から「美食」という言葉があり、それは「美味しくて美しい食べ物」を意味していると思いますが、コロナ禍によって、ヨーロッパでも同じ傾向が生まれたと思います。みなさん、自分の自宅で美味しくて美しい料理を楽しみましょう。